今回の授賞式は、当初予定しておりました10月30日ではなく、
諸事情により、10月28日に変更して行いました。当初の日程で
ご予定くださっていた皆様にはご迷惑をおかけし、大変申し訳あり
ませんでした。そのような事情で、審査員長である難波利三先生
もご欠席だったのですが、お手紙を書いてくださり、当日読ませて
いただきました。
難波先生の了解を得て、ここに掲載させていただきます。
第二回・藤本義一文学賞 授賞式に寄せて
審査員長 難波 利三
所用で出席できないことを、まずもってお詫び致します。
第二回・藤本義一文学賞に全国から応募して下さいました大勢の皆様に、
審査員長として厚くお礼申し上げます。その中から厳正な審査で選ばれ、
本日、晴れの授賞式を迎えられた九名の皆様、誠におめでとうございます。
心よりお慶び申し上げます。
個々の受賞作につきましては、「たる出版」より出版される作品集に講評が
掲載されておりますので、そちらを読んで頂ければと思いますが、いずれも
個性豊かで読み応えがあり、藤本義一文学賞にふさわしく、すばらしい作品が
選ばれたと、自負しています。
今回、一つ気になったのは、作品の主人公、もしくはそれに準ずる重要人物が、
おしまいに死亡したり、あるいは、すでに亡くなっている前提でストーリィが始まる、
という作品が目立った点です。
最終候補に残った二十六作中、半数以上がそれで、本日の栄えある受賞九作品
の中でも、実に六作品がそういう展開です。これはいささか多いのではないかと、
気になるのです。
作品の流れの中で、必然的に主人公に「死んでもらう」、もしくは「消したくなる」
のであれば、それはそれで結構でしょう。しかし、今回の最終候補作や受賞作のうち、
別に死ななくても、消さなくても、生かしておくほうが、作品としての深みが増して、
余韻が残るのに、惜しいなと、私、個人的に思えるものがいくつもあったので、参考
までに、あえて申し上げる次第です。その点も頭の片隅に置いて、受賞作品を味わって
頂ければ幸いです。
本日はご出席頂き、誠に有難うございます。
不一
平成二十八年十月二十八日 |